もしもダンガンロンパだったら 第12話



公共浴場でヘルの死体が発見された。
胸に突き刺さっているドクロマークとハートマークが彫り込まれたナイフ・・・。磔にされたヘル・・・。そしてジェノサイダー翔・・・。
事件の犯人を突き止めるために様々な所を調査してみたけれど、わかったことは何一つなく変わりに得た物は疑問だけ。
本当にこの事件の犯人を私は突き止められるのだろうか・・・・。

琶月
「(弱気になんてなったら・・・だめだよね・・・。私が頑張らないとこの事件は解決でいないぐらいの意気込みでいかないと・・・!!)」

誰かの死体を見て、頑張れる訳がないんだけれど・・・。
でも、今は悲しんでいる場合じゃないんだ。

公共浴場を出た後、まずはジェノサイダー翔の事について調べる事にした。
寄宿舎エリアを出て校舎エリアへ向かい、そのまま二階へと足を運んだ。
その途中キュピルさんとすれ違った。

琶月
「あ、キュピルさん。」
キュピル
「琶月か。・・・どうだ?証拠の方は何かつかめたか?」
琶月
「うーん、気になる所は沢山あるんですけれど残念ながら直接犯人に結び付けられそうな所は殆どありませんね・・・・。」
キュピル
「・・・そうか。琶月は琶月なりに頑張って調べてくれ。」
琶月
「あ・・・。えっと・・・。一緒にこう探してくれたりは・・・しないんですかね?やっぱり・・・・。」

気後れしてしまい、頭を徐々に下に向け上目使いで頼んでしまった。
キュピルさんは色んな所に気付いてくれるから私が見逃してそうな所を見つけてくれる気がするから一緒に・・・探索したい。
・・・それに・・・。あの図書室で見つけたメモ用紙の件で少し関係が疎遠になったような気がして、なんとか関係を修復したいというのもある。
だけど。

キュピル
「・・・・悪い。今回はちょっと付き合っている余裕はない。」
琶月
「・・・そ、そうですよね。す、すみません・・・。」

・・・やっぱり、私じゃだめだよね・・・。これがルイさんとかだったら承諾したのかな・・・・。
私はそのままキュピルさんの横を通り過ぎて図書室に行こうとした瞬間。キュピルがぼそりと呟いた。

キュピル
「・・・・勘違いしないでくれ。仮にルイだったとしても断った。今回の事件は難しくて俺も悩んでいるんだ。
いいか?俺と琶月は仲間だ。・・・困ったことがあったら相談しにきな。」
琶月
「え?」

それだけ言うとキュピルは何のリアクションも出さずに1階へと降りて行った。
・・・・嫌われては・・・いないんだよね?

琶月
「(・・・・ちょっとやる気回復したかも。)」

・・・・でも、今の言葉に引っかかったのは・・・私の思い過ごしだよね?・・・うん。とにかく今の事件を解決することに専念しよう。
意気揚々に図書室へと向かいだす私。
勢いよく扉をあけて書庫室の中に入ると、そこには私の予想通りギーンがいた。
ギーンと目が合うと、いかにも「お前もか」っと言いたげな顔で私を睨みつけてきた。

琶月
「あ、ギーンさん!!」
ギーン
「土下座すれば読んでやってもいい。」
琶月
「私まだ何も言ってないのに!!?」

ギーン
「大方、例の事件簿を俺に読んでくれと頼む気だったんだろう?」
琶月
「むぐっ・・・。」

まさしくその通りで何も言い返せない。

ギーン
「で、土下座するのか?」
琶月
「お願いします・・・・。」

速攻でギーンの足元にひれ伏す私。プライドもプライバシーも、師匠の弟子になった瞬間から全てを捨てています・・・。

ギーン
「・・・・貴様の土下座は他の奴の土下座よりも遥かに価値が低い。微生物以下の存在だな。」
琶月
「ああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!
土下座してあげたのに、その言い方は酷い!!!師匠だったら『フッ、仕方ないな』って言ってくれるのにっ!!」
ギーン
「五月蠅い奴だな。静かにしろ。」
琶月
「読んでくれるまで叫びます!ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
ギーン
「何なんだこいつは・・・。」


ギーンが心底呆れきった顔をする。

琶月
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」
ギーン
「土下座しながら叫ぶな!無駄に声が反響して五月蠅い!!」
琶月
「わああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
ギーン
「・・・ここまで呆れたのは今まで生きてきた中で初めてかもしれん・・・・。・・・・仕方がない読んでやるから、まずは叫ぶのをやめろ。」
琶月
「わああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
ギーン
「・・・・こいつ、自分の叫び声で俺が言った事が聞こえていないようだな。おい、まな板!」

ギーンが私の頭を軽く蹴る。

琶月
「いたっ!」
ギーン
「読んでほしい所を言ってみろ。」
琶月
「わっ、やった~~!」

私はすぐに土下座の体勢から立ち上がる。・・・・ギーンが心底呆れた表情をしているが見なかった事にしよう・・・・。

琶月
「えーっと、とりあえずジェノサイダー翔の関連する所を全部読んでほしいんですけど・・・。」
ギーン
「12時間ぐらいかかるが良いのか?」
琶月
「その前に学級裁判始まっちゃうじゃないですか!!・・・え、えーっと・・・。・・・・ギーンさんがおすすめする部分を?」
ギーン
「俺に頼る上に疑問形で答えるなっ!!
全く、貴様という人物が何故生きているのか不思議だ。空気以下だな。」
琶月
「存在価値そのものを疑わないでくださいっ!!」

目を瞑って拳を握りしめながらギーンの耳元で叫んだ。

ギーン
「うるさいっ!全く、本当にしょうがない愚民め。今回の事件に関係のありそうな所を読んでやるから正座して黙って聞け!」

1秒もかけずに正座する私。もし、私が犬なら尻尾も振ってあげていい。

ギーン
「馬鹿犬が・・・。」
琶月
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」
ギーン
「・・・・読むぞ。」

そういうとギーンはジェノサイダー翔について書かれている本を開いて私がまだ知らないジェノサイダー翔の情報について読み聞かせてくれた。

ギーン
「『ジェノサイダー翔の犯行手口について。
ジェノサイダー翔が殺人を犯す際に自分自身にポリシーを課している事がこれまでの調査から分っている。
そのポリシーと思われる物は以下2つ。

・必ずドクロマークとハートマークが彫られたナイフを使用して殺害する。
・殺害後の遺体は例外なく全て壁に磔にする。』」

琶月
「・・・・ドクロマークとハートマークが彫られたナイフを使用して殺害するってのは確か2馬鹿が言っていた気がする・・・・。
でも、遺体全てを磔にするっていうのは言ってなかったような・・・。」
ギーン
「だろうな。遺体を磔にするという情報は各国の首相、もしくは警察庁のトップクラスの者でなければ知らない情報だ。
通常凶器についてはマスコミによって世間に大々的に公表されて情報収集を図るが、遺体の状態は通常、捜査するにあたって民衆に知らせる必要はないからな。
ましてや、死体の状況をそのままカメラに写す訳にもいくまい。」
琶月
「ふーん・・・・。」

  [言魂:ジェノサイダー翔の事件簿]
 ->これまでジェノサイダー翔が犯した犯罪、事件、殺害人物について全て細かく記載されている。
 ->ジェノサイダー翔の特徴として、ドクロマークとハートマークが彫り込まれているナイフを使って被害者を殺害し壁に磔にしている。
 ->ドクロマークとハートマークが彫り込まれているナイフで殺害している件は一般に知られているが、磔にされている事は極秘情報となっている。
 ->以前、ギーンからジェノサイダー翔は貴族の嗜みを持つ知能犯という事も聞かされている。

ギーン
「以上だ。後は辞書でも使って適当に解読する事だな。」

そういうとギーンはジェノサイダー翔の事件簿を私に投げつけて書庫から出て行ってしまった。

琶月
「わっ!わっ!わっ!!待って下さい!!私読めないですってば~~!!!」

しかしギーンは私のいう事に聞く耳を持たず、そのまま本当に出て行ってしまった・・・・。

琶月
「・・・・ど、どうしよう・・・。とりあえず本だけ開いてみようかな・・・。」

正座したまま、床に落ちた本の表紙をめくって適当に読み流してみる。
何て書いてあるのか全く分からないけれど、唯一分るのは遺体の状況のみ。

琶月
「(この写真から何か情報を拾えないかな・・・・。・・・・・・・・。)」

眺め続ける事数分。全然収穫がないが、ある事に気が付いた。

琶月
「・・・・あれ?」

・・・・遺体の胸に刺さっているナイフ・・・。それの全てが銀製のナイフだ

[言魂更新:ジェノサイダー翔の事件簿]
->これまでジェノサイダー翔が犯した犯罪、事件、殺害人物について全て細かく記載されている。
->ジェノサイダー翔の特徴として、ドクロマークとハートマークが彫り込まれているナイフを使って被害者を殺害し壁に磔にしている。
->ドクロマークとハートマークが彫り込まれているナイフで殺害している件は一般に知られているが、磔にされている事は極秘情報となっている。
->以前、ギーンからジェノサイダー翔は貴族の嗜みを持つ知能犯という事も聞かされている。
->犯行に使用しているナイフは全て銀製の物。


琶月
「(・・・・これって偶然?それとも・・・・?)」

・・・・ジェノサイダー翔について調べられることは以上・・かな。
これ以上この本を読み続けても得られる証拠は少ないだろう。

琶月
「(後は・・・・ジェスターさんとかに話を聞くことが出来れば・・・大体は調べ終わるんだけど・・・・。)」

・・・・全然まだ犯人像が浮かび上がらない。強いて言えばジェノサイダー翔が犯人っぽいっという事だけ。
でも、そのジェノサイダー翔が誰なのかまでは分らない。・・・・ますますこの先が不安になる。

琶月
「う、うう・・・。と、とにかくジェスターさんを探そう・・・・。」

私は書庫室、図書室から出て行き校舎エリア内の廊下をうろうろし始める。
よく教室のどっかで落書きしていたので今も落書きしていないものかと思い、あちこちの教室を覗いてみるが見当たらない。
2階・・・1階・・・・校舎エリアをくまなく探してみたがジェスターは見当たらない。

琶月
「(寄宿舎エリアにいるのかな?)」

寄宿舎エリアの方に足を運ぶと、食堂の目の前にジェスターが立っていた。

琶月
「あ、ジェスターさん。」
ジェスター
「ん~~~?」
琶月
「あの、ちょっと聞きたい事が・・・・。」
ジェスター
「何々?」

珍しくジェスターの気がこっちに引いた。すかさず、ディバンから聞いたことをジェスターに質問してみた。

琶月
「ジェスターさん、昨日の夜公共浴場の前でウロウロしていたらしいですけど・・・・。何で公共浴場の前でウロウロしていたんですか?」
ジェスター
「別に深い意味はないし簡単な話だよ?ヘルがず~~~~~~~~~~っとお風呂にいたから入れなかっただけ。
琶月
「・・・ず~~~~~っと?」
ジェスター
「そう!ず~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っと!!!
私は混浴なんかしないから、ヘルがお風呂から出てくるの待ってたんだけど、中々出てこないから公共浴場の前でウロウロしていただけ。」
琶月
「ちなみに・・・何時から何時ぐらいまで公共浴場の前にいたんですか?」
ジェスター
「えーっと、夜の9時から11時くらい。」
琶月
「長!?」

ジェスター
「やっぱりシャワーよりお風呂の方が気持ちいから待ってたんだけど、それだけ待っててもヘルは出てこなかった!!」
琶月
「よく二時間もここの前で待っていましたね・・・。」

ジェスター
「何か言った?」
琶月
「な、なんでもないです!・・・・・・・う~~~ん・・・・。あ、ウロウロしていた時何か気になる事はありませんでしたか?」
ジェスター
「特にないよ。強いて言えば、2馬鹿がキューに胸を揉もうとしてボコボコにされてたよ。」

・・・それは流石に事件とは関係なさそうだ。

ジェスター
「・・・・あ、でもちょっと変なの見たかも。」
琶月
「ん?何ですか?」
ジェスター
「11時になっていい加減疲れちゃったから部屋に帰ろうとしたとき、誰かが走って公共浴場へ行ったような・・・。しかも何か手に持っていたような気がする!棒みたいなもの!」
琶月
「・・・・え!?それは誰ですか!?」
ジェスター
「関係ないと思ってよくみてないや。」
琶月
「男性か女性かも・・・?」
ジェスター
「それも見てないよ。私には関係ないもーん。」
琶月
「(それが犯人だったらどうするんですか・・・。。)
ちなみに手に持っていた棒みたいな物ってのはよく見えましたか?」
ジェスター
「全然ー。あ、でも何か凄い長い棒みたいな物を持っていた気がするよ。」

・・・・長い棒?

 [言魂:ジェスターの証言]
 ->事件のあった日。ジェスターは公共浴場の前でお風呂に入るために21時から23時まで入り口前でずっとウロウロしていた。
 ->23時過ぎに誰かが急いで公共浴場に駆けて行った模様。
 ->手に長い棒みたいな物を持っていたらしい・・・。凄く犯人臭い。


琶月
「(一体ジェスターさんは誰を見たんだろう・・・。調べないと。)」

・・・・でも、そろそろ時間がなくなってきた。急いで調査しないと。

琶月
「ジェスターさん、ありがとうございました。」
ジェスター
「この情報は高くつくよ~?」
琶月
「うぇっ!!!?」
ジェスター
「この事件が終わったら、背中流してね~。」
琶月
「あ、それぐらいなら。・・・・でも、ヘルさんが死んだ場所でお風呂に入りたいと思いますか?」
ジェスター
「綺麗だったら私はどうでもいいよ。」

・・・ジェスターの性格がいまいちつかめない。
ただ、人間味をあまり感じないっという点だけは確かだ。・・・人間じゃないらしいけど。

琶月
「そ、それじゃ・・・。」

そういうと私はジェスターさんの前から離れて行った。
・・・・それにしても・・・・・。

琶月
「(・・・・犯人らしき人が手に何か持って・・・・。今回の事件とはあんまり関係なさそうだけど、何か気になる・・・。でも、何を持っていたのかすら分らないんじゃ・・・。)」
キュピル
「ん、琶月か。」
琶月
「ひえぇっ!」

いきなり後ろから声をかけられ、素っ頓狂な声をあげてしまった。

キュピル
「何なんだ今の叫び方・・・。それより何か良い情報は手に入ったか?」
琶月
「え?あ・・・えーっと・・・。実は・・・。」

私はさっきジェスターさんから聞いた話をキュピルにも教えてあげる。
キュピルさんは非常に興味深そうな表情をしながら私の話をずっと聞き続けてくれた。

キュピル
「なるほどな・・・。・・・・もしかしたら、ちょうど倉庫で見た物がジェスターが見たものかもしれない。」
琶月
「え?どういう事ですか?」
キュピル
「百聞一見にしかず。倉庫に行ってみな。明らかに変なのがある。」

・・・・倉庫?





・・・・・。

・・・・・・・・・・・・。


琶月
「よいしょっと。」

倉庫の中にはいった私は、少し高い所にある電気のスイッチを入れた。
照明に照らされてもなお薄暗いこの倉庫でキュピルさんは一体何を見たというのだろうか?

キュピル
「奥の方に行ってみろ。」
琶月
「奥の方・・・ですか。」

ここの倉庫はそれぞれジャンルや資材事に整理かつまとめて置かれているため何か変な物があったとすればすぐに気づけるはずだ。
・・・奥の方を探し始めて数十秒後。キュピルさんの言う通り、明らかに変な物が床に落ちていた。

琶月
「曲がった・・・鉄パイプ?」

私の足元に一本の鉄パイプが無造作に落ちていた。
しかも、そこに落ちていたのは真ん中辺りでグニャッと曲がった鉄パイプだった。でもジェスターが見たという長い棒とは何か違う気がする・・・・。
・・・それにしても恐ろしく長い。Vの一辺の長さだけでも70cmぐらいはありそうだ。こんな大きなものを持ってたら凄く目立つと思うんだけど・・・。

琶月
「これって」
キュピル
「この曲がり方は何か強い力が加わったことによって捻じ曲げられたような折れ方だな。」

・・・・ますます訳分らなくなってきた。

 [言魂:捻じ曲がった鉄パイプ]
 ->倉庫の奥に捻じ曲がった鉄パイプが一本落ちていた。
 ->何か強い力が加わった事によって捻じ曲がったのだと思われる。


琶月
「う、うーーーーーーーーーん・・・・・これは・・・・・・。」
キュピル
「・・・・難解を極めるな、今回の事件は。」
琶月
「ジェスターさんが鉄パイプを持った人を思い出してくれれば凄く良いんですけど・・・。」

期待しない方がよさそうだ。

琶月
「・・・残り時間が少なくなってきました。・・・どうですか?キュピルさん、犯人は割り出せそうですか・・・?」
キュピル
「今のままの証拠だと少し厳しいな。」
琶月
「そ、そうですか・・・・。」

・・・・結局犯人が割り出せなくて皆・・・処刑・・・とかになったら・・・・嫌だよ・・・。

キュピル
「今回の点は気になる事が多い。まず、ジェノサイダー翔だ。」
琶月
「ジェノサイダー翔・・・。」
キュピル
「琶月も少しは調べたか?」
琶月
「はい。・・・あのドクロマークとハートマークが彫り込まれたナイフ・・・。あれを使って被害者を仕留めて・・・。磔にするのがジェノサイダー翔の特徴らしいです。」
キュピル
「そうだな。今回の学級裁判で真っ先に議論になるだろう。」
琶月
「それに・・・・ヘルさんの火傷の痕も気になりますね。一体どうして火傷の痕なんか?火傷しそうな所なんてそんなにないと思うんですけど・・・。」
キュピル
「・・・・・・・・・・・。」
琶月
「他にも気になる所が・・・。」
キュピル
「悪い、琶月。この期に及んで気になった点が浮かんできた。ちょっと調べてくる。」
琶月
「あ!」

そういうとキュピルは走って倉庫から出て行ってしまった。
・・・・ついていこうと思ったけれど、その前にキュピルさんが先に行ってしまったので追いつく自信がない。

琶月
「・・・・・あ、そうだ。私も最後にゴミ捨て場くらいは調べておこうかな~。」

もしかしたら凶器が捨てられているかも?
心の中でそう呟いてゴミ捨て場に向かう事にした。




・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



琶月
「電気・・・電気・・・。」

ゴミ捨て場、またの名をトラッシュルームに入った私。
ここは依然にもモノクマから説明した通り、部屋の奥には焼却炉があってその途中にシャッターが下りている。
このシャッターを開けられるのは掃除当番だけで週に一回交代する事になっている。
まだ一週間経過していないため掃除当番は引き続きファンが担当している。後1~2日で掃除当番が入れ替わるんだっけか。

ちなみに、掃除当番といっても各々の部屋に入ってゴミを回収するような事はしない。
あくまでも、ゴミは自分でここゴミ捨て場に運んで行って、掃除当番はここに置かれたゴミを焼却炉に放り混んでいくっというだけの事。
そういう事もあってか、シャッターの近くにはゴミ袋が沢山置かれていた。・・・ファンさん、もしかして暫く掃除していない?

琶月
「・・・えーと・・・何か凶器みたいな物は捨てられていないかなー・・・。」

ガサゴソとゴミ袋の中身を漁りだす私。・・・・流石に今だけは誰にもこの姿を見られたくない。
ちなみにプライバシーを配慮してか、ゴミ袋は昔懐かしの黒袋タイプ。透明ではないので実際に袋の中を開けないと何が入っているのか見えない。
ゴミ袋を開けて漁ってみるが、漁れど漁れどそこにあるのはお菓子の袋に埃やティッシュゴミ。・・・何か見たくない物もちらほら。
どれもこれも事件とは関係なさそうな物ばかり。

琶月
「はぁ・・・。最後に奥にあるゴミ袋だけ調べて諦めようかな・・・。」

私は沢山のゴミ袋に埋もれている一つのゴミ袋を引っ張り出した。
溜息をつきつつ袋の口を開けると、見慣れない物が沢山入っていた。

琶月
「ん?・・・何これ?」

引っ張り出したゴミ袋の中身は縄だけが入っていた。殆どが新品で使われた形跡はない。

琶月
「・・・・こんな大量の縄を捨ててるなんて・・・。・・・・これ、いかにも怪しい・・・。」

 [言魂:大量に捨てられた縄]
->新品の縄が一つのゴミ袋に全部捨てられていた。
->事件と関係があるのか不明。


その時だった。



キーンコーンカーンコーン



モノクマ
「うぷぷぷ・・・・。どうどう?証拠は集まった?それとも不十分?もっと調査する時間が欲しい?
でもだめだよ。僕もう待ちくたびれちゃったから。それじゃー、やっちゃいましょうか!学級裁判を!」


・・・・時間が来たようだ。
まだまだ調査したかったけれど・・・・。今の私がこれ以上調査を続けたところで大した証拠はつかめなかっただろう。
最後の最後に見つけたこの縄ですら今回と関係があるのか果てしなく際どい。

モノクマ
「校舎エリア一階にある、赤い扉に入って待つんだよ~?。
うぷぷ、ちゃんと迷わずいけよ~。じゃぁ、また後でね~!」


・・・・。


今回も・・・・行くしかないんだ。

覚悟を決めて・・・この死線を潜るんだ・・・・。


私は赤い扉へ向かいながら、これまで見つかった証拠になりそうな物を思い返していた。


  [言魂:ザ・モノクマファイル2]
 ->事件状況について詳しく書かれている。

『被害者はヘル。死亡時刻は深夜の時間帯。
死体発見場となったのは寄宿舎エリアにある公共浴場のサウナ室前。
被害者はサウナ室入口近くの壁に磔にされた状態で発見された。
体に火傷の痕あり。右拳に切り傷あり。胸に刺し傷あり。』
  [言魂:少ない出血]
 ->ナイフで刺された箇所からの出血の痕があまり見当たらない。
 ->釘が打ち込まれている手の平も同様に出血の痕が見当たらない。
  [言魂:ジェノサイダー翔]
 ->今、巷を騒がせている連続殺人鬼。
 ->イケメンかつ若い男性を中心にドクロマークとハートマークが彫り込まれているナイフで殺しまわっているらしい・・・・。
  [言魂:ナイフに彫り込まれた二つのマーク]
 ->ナイフの持ち手部分にドクロマークとハートマークが彫り込まれている。
 ->かなり荒々しく掘り込まれていて素人っぽさが出ている。
 ->ナイフにしてはやけにでかい。
 ->何処かで見たことがあるような気がする・・・・。
 ->ジェノサイダー翔が持つナイフらしい。
 [言魂:右拳に出来た切傷]
 ->右手の拳に複数の切り傷が出来ている。
 ->出血した痕あり。
 ->切り傷というよりはぶつけた時に出来た傷っぽい。
  [言魂:両手に打ち込まれた釘]
 ->ヘルの両手を貫通するように釘が壁に打ち込まれている。
 [言魂:右腕に出来た火傷の痕]
 ->右腕に火傷の痕がある。
 ->どうして火傷の痕が出来ているのか不明。
   [言魂:ガムナの証言]
 ->ガムナが以下の発言をしている。

「ヘルの推定体重は80Kg前後。そんな重たい人を持ち上げて壁に打ち付けるのは男性でも辛いな。
少なくとも、女性には無理なんじゃないのか?」
  [言魂:ガラスの破片]
 ->死体の近くでガラスの破片が飛び散っている。
 ->サウナ室の扉についている小窓の破片。
  [言魂:サウナ室の扉の傷]
 ->サウナの扉を蹴破ろうとした跡がある。
 ->サウナに入った時に気が付いた。
  [言魂:サウナの扉]
 ->サウナへは扉を押して入る。出るには扉を引いて出る
 ->取っ手はドアハンドル型、
  [言魂:ディバンの証言]
 ->昨日の夜、寄宿舎エリアでジェスターがずっとウロウロしていたらしい。
 ->ディバンの見た位置から考えて公共浴場前をうろうろしていた事になる・・・?
  [言魂:ジェノサイダー翔の事件簿]
 ->これまでジェノサイダー翔が犯した犯罪、事件、殺害人物について全て細かく記載されている。
 ->ジェノサイダー翔の特徴として、ドクロマークとハートマークが彫り込まれているナイフを使って被害者を殺害し壁に磔にしている。
 ->ドクロマークとハートマークが彫り込まれているナイフで殺害している件は一般に知られているが、磔にされている事は極秘情報となっている。
 ->以前、ギーンからジェノサイダー翔は貴族の嗜みを持つ知能犯という事も聞かされている。
 ->犯行に使用しているナイフは全て銀製の物。
  [言魂:ジェスターの証言]
 ->事件のあった日。ジェスターは公共浴場の前でお風呂に入るために21時から23時まで入り口前でずっとウロウロしていた。
 ->23時過ぎに誰かが急いで公共浴場に駆けて行った模様。
 ->手に長い棒みたいな物を持っていたらしい・・・。凄く犯人臭い。
  [言魂:捻じ曲がった鉄パイプ]
 ->倉庫の奥に捻じ曲がった鉄パイプが一本落ちていた。
 ->何か強い力が加わった事によって捻じ曲がったのだと思われる。
  [言魂:大量に捨てられた縄]
->新品の縄が一つのゴミ袋に全部捨てられていた。
->事件と関係があるのか不明。


見つかった証拠は凄く多い方じゃない。

でも、議論の中で言魂は増えていくかもしれない。

常に頭の中で整理しながらやってかないと、学級裁判で頭がこんがらがっちゃうかもしれない・・・・。


・・・・・。

これだけの証拠で大丈夫なのかと不安になってしまう。

もしかしたら、決定的な証拠を見逃してしまったかもしれない。
その証拠を誰も見つけることが出来なくて・・・犯人を追いつめられないかもしれない。
もし、そうなっちゃったら・・・・私は達は皆処刑されてしまう。

・・・・・。

だめだ。ここで迷っていたら強くなれない。

自分を信じるんだ・・・。

・・・・自分を信用することが強くなる事って・・・・。

師匠だって・・・・キュピルさんだって・・・・・そう言っていた・・・。


私は懐から一枚の写真を取り出す。師匠がずっと隠し持っていた写真だ。

・・・・・・・・。

・・・よし、覚悟を決めよう。


・・・・。





赤い扉の前へとたどり着いた。
私は、そのでかくて重々しい赤い扉を開け中に入る。この扉はもう今後一回も潜りたくない。
一室にはもう殆どの皆が到着していた。

ジェスター
「あ~!やっと琶月が来た~!逃げたかと思ったんだよ?」
琶月
「逃げてどうするんですか・・・。」

まぁ・・・前回よりかは気持ちは楽なんだけど・・・。
この間の学級裁判は私が犯人なんじゃないかって皆が疑っていたし・・・。
それでも、この部屋の重苦しい雰囲気は一生慣れる気がしない。
皆が皆、疑いの眼差しを向けているからだ。

犯人は誰なのか?誰がヘルを殺したのか?

ジェスターのようなその無邪気な笑顔の裏には、悪魔のような本性が隠れているのか?
その人の本性を探るかのような思案や疑心がこの部屋で深く渦巻いている。

全員が一室に揃うと部屋の隅にあったモニターの電源が入り、モノクマの姿が映し出された。

モノクマ
「うぷぷ・・・みんな揃いましたね?それでは・・・。
正面に見えるエレベーターにお乗りください。そいつが、オマエラを裁判場まで連れてってくれるよ。
オマエラの・・運命を決める裁判場にね。

ういうとモニターの電源は落ち、そして目の前にあるエレベーターへ乗り込むための扉が開いた。


キュー
「また・・・このエレベーターに乗る嵌めになっちゃうなんてね・・・。
皆で・・・協力して脱出しようって言ってたのに・・・。どうしてこんな事に・・・。」
琶月
「・・・気持ちはわかります。・・・・でも・・・今は落ち込んでいる場合じゃないです。今度こそ、この学級裁判を最後にして皆でここから生きて出ましょう・・・!」

何人かが私の言葉に頷いてくれた。

・・・この間とは逆に、私が真っ先にエレベーターに乗り込んだ。足が緊張で震えている事は変わらない。
一歩一歩進むごとに、心臓の鼓動も徐々にその速度をあげていく。斬首台へと向かっているかのような気持ちだ・・・。

私がエレベーターに乗ると、次にキュピル・・・ルイ・・・キュー・・・他の人達も続々と乗り込んでいく。

・・・そして・・・。

最後にジェスターが乗り込むと扉は閉じ・・エレベーターは動き始めた。




・・・・。

・・・・・・・・・。


ゴウン、ゴウンと耳障りな音を響かせながらエレベーターは地下へと下っていく。




止まらない。

もう止まらない。


誰かが作った運命の歯車に、私達一人一人の歯車が噛みあっていき、そしてどこかで崩れていく。
崩したのは誰か?


・・・・。


止まらない。


このエレベーターと同じように、一度進んでしまった出来事はもう止めることは出来ない。

学級裁判だって、この先の未来だって・・・。



・・・・。



そして私達を待ち受けている場所へとやってきた。



学級裁判・・・!




モノクマ
「うぷぷ。やっときたね?それじゃ~今回も!学級裁判!はっじめるよ!」



始まる・・・。

命がけの裁判・・・。


命がけの騙しあい・・・


命がけの裏切り・・・


命がけの謎解き・・・


命がけの言い訳・・


命がけの信頼・・・




命がけの学級裁判!!


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